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顔の筋肉は、年を取らないのか?Mechanobiologyから考えるエムタイトの理由【六本木アートラウンジクリニック 中野陽子院長】

2026.09.06

顔面筋の加齢とMechanobiologyの視点からエムタイト導入の理由を解説する、アートラウンジクリニック院長・中野陽子医師(麻酔科専門医・麻酔科指導医)

なぜ、顔の筋肉を治療するのか?

皆さんに、まず質問です。

身体にとって、筋肉はなぜ大切なのでしょう?

歩くため。立つため。姿勢を保つため。代謝を維持するため。転倒を防ぐため。そして、年齢を重ねても自分らしく生活するため。

「筋肉は大切ですか?」と聞かれたら、おそらくほとんどの人が「大切です」と答えるはずです。

では、もう一つ質問です。今、どれくらい運動できていますか?

週に何回、運動していますか?筋肉を維持するために、何かしていますか?

「運動しなきゃ」「筋肉を落としちゃいけない」——分かってはいる。でも、続けるのは簡単ではありません。だからジムに行く。トレーナーをつける。ピラティスに行く。

私たちはすでに、「年齢とともに筋肉も変化する。だからケアする必要がある」ということを、身体については知っているのです。

では、顔は?

顔の筋肉は、年を取らないのでしょうか。

もちろん、そんなことはありません。

笑う。目を開く。眉を上げる。口角を上げる。話す。食べる。

私たちが毎日当たり前にしている表情や動きには、すべて顔面筋が関わっています。そして当然、顔面筋も加齢の影響を受けます。

身体の筋肉については、これだけ考えているのに

身体では、加齢に伴う筋量・筋力・身体機能の低下を「サルコペニア」や「フレイル」という概念で捉えます。口腔領域には「オーラルフレイル」という概念もあります。

一方で、「顔のフレイル」という医学的に確立された概念は、現時点では存在しません

しかし、ここで考えてみてください。顔を構成する筋肉だけが、加齢から免れるのでしょうか?

顔面筋にも、加齢に伴う構造的・機能的変化が起こります。だとしたら美容医療でも、皮膚の老化だけでなく、脂肪の変化だけでもなく、「顔面筋の加齢」について考えてもよいのではないでしょうか。

ジムに行くのに、顔は専門家に任せないの?

身体については、「自分にどんな運動が必要なのか」「どの筋肉が弱いのか」「どこが過緊張なのか」をトレーナーに見てもらう人もいます。

では、顔はどうでしょう。

顔にも多数の筋肉があり、それぞれ役割が異なります。挙上方向に働く筋肉もあれば、下制方向に働く筋肉もあります。

だから私は、顔こそ、解剖を理解している専門家が考えるべきではないかと思っています。

これが、私がエムタイトをアートラウンジに必要だと考えた理由の一つです。

▶ エムタイト導入の背景はこちらの記事でも解説しています:たるみ治療に残されていた空白地帯「筋肉」|RF×EMS複合機エムタイト(M-TIGHT)導入のお知らせ

ただし、エムタイトは単なる「顔の筋トレ」ではありません

ここが、私が一番伝えたいところです。

筋肉を収縮させる——それだけを見れば「顔の筋トレ」という説明になります。しかし私が興味を持っているのは、筋肉が収縮した、その先です。

さらには。エムタイトは筋肉を刺激するだけではありません。高周波も出力します

筋肉だけをターゲットにしているわけではない。全体をアセスメントする力があってこそ、機械の良さも発揮されると考えています。

筋肉が収縮すると、何が起こるのでしょう?

筋肉が収縮すると、そこに「力」が発生します。その力は筋肉内で完結せず、筋膜や結合組織、ECM(細胞外基質)など周囲の組織にも力学的な刺激として伝わります。そして私たちの細胞は、「力」を感知することができます。

細胞が物理的な力を感知し、それを細胞内の生物学的シグナルへ変換していく過程を、Mechanotransduction(メカノトランスダクション)といいます。そして、「力が細胞や組織にどのような変化をもたらすのか」を考える学問領域が、Mechanobiology(メカノバイオロジー)です。

Muscle Contractionから、その先へ

私たちはエムタイトを、「筋肉を動かす機械」だけで終わらせたくありません。

  1. 筋肉が収縮する
  2. Mechanical loading(力学的負荷が生じる)
  3. Mechanosensing(細胞・組織が力を感知する)
  4. Mechanotransduction(物理的刺激が生物学的シグナルへ変換される)
  5. Cellular response(細胞が応答する)
  6. Tissue adaptation / Remodeling(組織が刺激に適応していく)

※これは、エムタイトによる顔面組織のリモデリング機序がこの経路で証明されている、という意味ではありません。筋収縮によって生じる力を、Mechanobiologyという生理学的な視点から捉え直してみる。私はここに、強い関心を持っています。

もう一つ、興味深いことがあります

Botoxは筋肉の過活動を抑える。エムタイトは筋活動を利用する。

一見すると、正反対の治療です。ではなぜ、どちらも顔を整えるための治療になり得るのでしょうか。

それは、筋肉が「強ければ強いほどいい」「弱ければ弱いほどいい」という単純なものではないからです。どの筋肉が、どの程度、どの方向に働いているのか。大切なのは、Muscle Balance(筋機能のバランス)です。

私は、Botoxとエムタイトを矛盾した治療だとは考えていません。むしろ、顔面筋の生理を異なる方向からコントロールする治療として捉えています。

だから、アートラウンジにエムタイトが必要です

新しい機械だからではありません。流行っているからでもありません。「顔の筋トレ」というメニューを増やしたいからでもありません。

私たちはこれまで、皮膚を見て、脂肪を見て、支持組織を見て、必要ならボリュームを補ってきました。そこに今回、Muscle Function(筋機能)という新しい視点を加えます。

私たちが考えたい美容医療

「どの機械が一番強いですか?」ではなく、「この患者さんの顔では、どの構造に介入する必要がありますか?」

そして、もう一歩先へ。「その組織に刺激を与えたとき、組織はどう応答するのでしょう?」

Anatomy tells us where to treat. Physiology tells us how tissue responds.
解剖学で、どこを治療するかを考える。生理学で、その組織がどう応答するかを考える。

Facial Muscle Physiology × Mechanobiology × Aging——顔面筋の加齢を、筋機能と組織応答の両方から考える。

エムタイトを、アートラウンジが「生理学から美容医療を考える」ための、新しい治療選択肢の一つとして育てていきたい。それが、私がこのデバイスをクリニックに導入したい理由です。


参考文献

この記事は、以下の医学論文をもとに書いています。専門的な内容ですが、「どの部分に、どんな研究があるのか」がわかるよう、ひとことずつ説明を添えました。

身体の筋肉の加齢について

  • サルコペニア(加齢による筋肉の減少)の国際的な定義:Cruz-Jentoft AJ, et al. Age and Ageing. 2019;48:16-31.
  • フレイル(加齢による心身の虚弱)の概念を提唱した論文:Fried LP, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56:M146-156.
  • オーラルフレイル(口の機能の衰え)が全身の虚弱につながることを示した日本の研究:Tanaka T, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73:1661-1667.

顔の筋肉も加齢の影響を受けることについて

  • 顔の筋肉の電気的な活動を若年層と50歳以上で比較した研究。年齢とともに、活動が下がる筋肉(頬を持ち上げる筋肉)と、逆に活動が上がる筋肉(眉間の筋肉)があることが示されています:Cotofana S, et al. Aesthetic Surgery Journal. 2021;41:NP1208-NP1217.
  • MRIで顔の筋肉の形が年齢とともに変化することを示した研究:Le Louarn C, et al. Aesthetic Plastic Surgery. 2007;31:213-218.
  • 頬のたるみが、皮膚・脂肪だけでなく「表情筋の働き」とも関係していることを示した日本の研究:Ezure T, et al. Skin Research and Technology. 2009;15:299-305.

筋肉が生み出す「力」と、細胞の反応について

  • 筋肉が収縮したときの力が、筋膜や周囲の組織にも伝わることを解説した総説:Huijing PA. Journal of Biomechanics. 2009;42:9-21.
  • 機械的負荷に応答して、筋・腱のECM(細胞外基質)がリモデリングされる仕組みを解説した総説:Kjaer M. Physiological Reviews. 2004;84:649-698.
  • 細胞が「力」を感じ取り、生物学的な信号に変換する仕組み(メカノトランスダクション)の総説:Ingber DE. FASEB Journal. 2006;20:811-827.

筋肉の「バランス」という考え方について

  • 顔の筋肉は「強ければよい・弱ければよい」ではなく、引き上げる筋肉と引き下げる筋肉のバランスが大切であることを論じた論文:de Maio M. Aesthetic Plastic Surgery. 2018;42:798-814.

大切なお断り

記事の中で述べた考え方は、生理学の知見をもとにした「私たちの見方」であり、治療効果を保証するものではありません。治療をご検討の際は、診察のうえで、お一人おひとりの状態に応じてご説明します。


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📝 この記事は、中野陽子院長のnote でもお読みいただけます。

■ 執筆者・監修者プロフィール
中野 陽子(アートラウンジクリニック院長 / 麻酔科専門医・麻酔科指導医)

【略歴・学術実績】
・2007年: 獨協医科大学医学部 卒業。在学中、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)へ留学。
・2009年〜: 沖縄県立北部病院、岩手医科大学などで麻酔科学を深く研鑽。
・2016年: 日本麻酔科学会誌『麻酔』にて、小児の高度な気道管理に関する論文を筆頭著者として発表。
・2022年: 大手美容クリニックを経て、アートラウンジクリニック院長に就任。
・2025年〜: 現在も大学病院 麻酔科非常勤医師を兼務。

最前線の麻酔科医としての豊富な臨床・学術経験(小児麻酔などの高度な気道・安全管理含む)を活かし、美しさと安全性を高いレベルで両立する美容医療を提供しています。