
美容医療の機器はどんどん進化していて、「結局どれを受ければいいの?」と迷われる患者様は少なくありません。
当院でよくいただくご質問のひとつが、
「ケアシスとLDMって、何が違うんですか?」
というものです。どちらも「痛みが少なく、ダウンタイムもほぼない、肌にやさしい治療」という点は共通しています。けれど、肌に対して行っていることはまったく別物です。
なお、Lumidermが採用しているデュアル周波数超音波(LDM)技術は、「水玉リフティング」という通称で呼ばれることもあります。他院で聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、同じ技術分類に属する治療の総称とご理解いただければと思います。
今日は、この2つの治療の違いを、できるだけわかりやすくお伝えします。
そもそも、目的が違う
一言でまとめると、こうなります。
- ケアシス(エレクトロポレーション)= 浸透(Delivery)の治療
→ 美容成分を、肌の奥まで届けるための技術 - Lumiderm(デュアル周波数超音波)= リペア(Repair)の治療
→ 肌そのものが持つ「治る力」を引き出すための技術
「何を入れるか」が主役なのがケアシス、「肌の状態を整えること」が主役なのがLumiderm、と考えていただくと分かりやすいと思います。
ケアシス ― 美容成分を届ける治療
ケアシスは、微弱な電気パルスを使って肌の表面に一時的に極小の通り道をつくり、通常では浸透しにくい美容成分(成長因子、ヒアルロン酸、各種美容液など)を肌の深い層まで届ける技術(エレクトロポレーション)です。
イメージとしては、「宅配便」に近い治療です。何を届けるかによって、期待できる効果も変わります。乾燥や、くすみ、栄養補給を目的としたケアに向いています。
ポイントは、「何を導入するか」が効果を左右するという点です。薬剤ありきの治療、と言い換えることもできます。
Lumiderm ― 肌が「自分で治る」のを助ける治療
一方でLumidermは、顔に関しては2つの周波数の超音波を使いながら、肌にやさしく働きかける治療です。この刺激が、肌の内部で次のような働きをサポートすると考えられています。
- 炎症をしずめる(赤み・むくみの軽減)
- 組織の修復を促す
- ダウンタイムを短くする
Lumidermは薬剤を「届ける」ことが主目的ではなく、肌そのものの回復力を引き出すことが目的です(美容液を併用するモードもありますが、超音波による浸透促進は主に角質層レベルにとどまり、ケアシスのような肌の深い層への確実な送達とは性質が異なります)。イメージとしては、「宅配便」ではなく「整体・マッサージ」に近い治療といえます。
※3MHz・10MHzのような高周波帯の超音波は、角質層内にごく微細な気泡(キャビテーション)を生じさせ、その働きで一時的に浸透経路が広がる「ソノポレーション」という現象が知られています(Polat et al., 2011)。専用美容液を併用するモードは、この仕組みを利用したものと考えられます。
「必要な炎症」と「行き過ぎた炎症」
ここで少し、炎症についてお話しさせてください。「炎症」と聞くと、悪いものだと思われがちですが、実はすべての炎症が不要というわけではありません。
肌が刺激を受けると、体は自分を守るためのタンパク質を増やし、細胞を修復しようとする反応を起こします。これは治癒のプロセスに欠かせない、いわば【必要な炎症】です。
問題になるのは、この反応の範囲を超えて炎症が長引いたり、強くなりすぎたりしたときです。これが赤みやむくみ、ダウンタイムの延長につながる【行き過ぎた炎症】です。
Lumidermが働きかけているのは、主にこの「行き過ぎた炎症」の部分だと考えていただくとイメージしやすいかもしれません。治癒に必要な反応そのものを止めてしまうのではなく、行き過ぎた部分だけをやさしく鎮めて、肌が本来のペースで回復できる状態に整える。これが、Lumidermの「リペア」という言葉が意味するところです。
※これは仕組みを理解しやすくするためのイメージであり、「行き過ぎた炎症だけを選んで鎮める」ことそのものを直接証明した研究があるわけではありません。
レーザーやRF、注入治療などを受けたあとの肌は、多かれ少なかれ炎症反応が起きています。その炎症をやさしく落ち着かせ、回復のスピードを助けてあげるのがLumidermの役割です。
なお、Lumidermが採用しているデュアル周波数超音波技術については、鼻の手術後のむくみ軽減など、周術期のケアを対象とした臨床研究が報告されています。「万能に肌質を変える治療」というよりも、「炎症や回復のプロセスをサポートする治療」として理解していただくのがより正確な捉え方です。
2つを比べると
| 項目 | ケアシス (エレクトロポレーション) | Lumiderm (LDM) |
|---|---|---|
| エネルギー | 電気パルス | デュアル周波数超音波 (1/3/10MHz) |
| 目的 | 美容成分を届ける(浸透) | 回復力を引き出す(修復) |
| キーワード | Delivery(導入) | Repair(修復) |
| 薬剤 | 前提として必要 | 基本的には不要 (角質層までの浸透) |
| 向いている悩み | 乾燥・くすみ・栄養補給 | 赤み・炎症・むくみ ダウンタイム短縮 |
実は、この2つは「どちらか」ではなく「どちらも」がベスト
ここまで読むと、「じゃあ自分にはどっちが合うの?」と思われるかもしれません。
でも実は、この2つは競合する治療ではなく、組み合わせることでより良い経過が期待できる関係にあります。
- レーザーやRF、注入治療の直後は、Lumidermで炎症を落ち着かせ、回復をサポート
- その後でケアシスを行い、必要な美容成分をしっかり届ける
- 高周波の治療の前にケアシスを行って水分量を上げ、高周波の後にルミダームで締める、という流れも良い
つまり、「治す」フェーズと「届ける」フェーズを分けて使う、という考え方です。順番と組み合わせを工夫することで、それぞれの機器を単独で使うよりも良い経過につながることが期待できます。
たとえば、サンダメージを受けた肌の場合
具体的なイメージが湧きやすいよう、紫外線ダメージ(サンダメージ)を受けた肌を例に考えてみます。
紫外線を長く浴びた肌では、目に見えないレベルで炎症が起きています。バリア機能が乱れ、赤みやほてり、乾燥、色素沈着といった形で表面に現れてくるのが特徴です。こうした肌に、いきなり美容成分をたくさん届けようとしても、肌側の受け入れ態勢が整っていなければ、刺激になってしまったり、期待したほど成分が生きてこなかったりすることがあります。
そこで、次のような順番がお勧めです。
① まずLumidermで、肌の炎症を落ち着かせる
紫外線でダメージを受けた組織の炎症をやさしく鎮め、バリア機能が回復しやすい状態を整えます。赤みやほてりが強い時期は、まずこのステップを優先します。
② ケアシスで美容成分を届ける
ビタミンCや、トラネキサム酸、成長因子といった、色素沈着や肌の透明感に働きかける成分を、回復してきた肌にしっかりと届けます。
炎症を抱えたままの肌に成分を届けるのではなく、まず土台を整えてから、必要なものを届ける。この順番を意識するだけで、同じ美容液を使っていても、肌の反応や実感には差が出やすくなります。
まとめ
- ケアシスは「美容成分を届ける」治療、Lumidermは「肌の回復力を引き出す」治療
- どちらが優れているという話ではなく、目的がそもそも違う
- 施術の前後やタイミングに合わせて組み合わせることで、より良い経過が期待できる
「今の自分の肌には、どちらが必要なんだろう?」「どんな順番で受けるのがいいんだろう?」と迷われた際は、カウンセリングで肌の状態を拝見しながら一緒に考えさせていただきます。お気軽にご相談くださいませ。
よくあるご質問(FAQ)
Q. ケアシスとLDM(ルミダーム)の違いは何ですか?
目的がそもそも違います。ケアシス(エレクトロポレーション)は、微弱な電気パルスで肌表面に一時的な通り道をつくり、美容成分を肌の深い層まで届ける「浸透(Delivery)」の治療です。一方Lumiderm(デュアル周波数超音波・LDM)は、2つの周波数の超音波で肌にやさしく働きかけ、行き過ぎた炎症を鎮めて肌本来の回復力を引き出す「リペア(Repair)」の治療です。ケアシスは「何を届けるか」が主役、Lumidermは「肌の状態を整えること」が主役、とご理解いただくと分かりやすいです。
Q. LDM(ルミダーム)とケアシス、どちらを受ければいいですか?
この2つは「どちらか」ではなく「どちらも」を組み合わせることでより良い経過が期待できる関係です。レーザーやRF、注入治療の直後はLumidermで炎症を落ち着かせて回復をサポートし、その後にケアシスで必要な美容成分を届ける、という順番が一例です。「治す(リペア)」フェーズと「届ける(デリバリー)」フェーズを分けて使うイメージです。お肌の状態によって最適な組み合わせは変わるため、カウンセリングでご相談ください。
Q. 「水玉リフティング」とLDMは同じものですか?
Lumidermが採用しているデュアル周波数超音波(LDM)技術は、「水玉リフティング」という通称で呼ばれることがあります。他院で聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、同じ技術分類に属する治療の総称とご理解いただければと思います。
Q. 紫外線ダメージ(サンダメージ)を受けた肌には、どちらがおすすめですか?
まずLumidermで肌の炎症を落ち着かせ、バリア機能が回復しやすい状態を整えてから、ケアシスでビタミンCやトラネキサム酸、成長因子といった成分を届ける、という順番がおすすめです。紫外線でダメージを受けた肌は目に見えないレベルで炎症が起きており、受け入れ態勢が整わないまま成分を届けても刺激になったり、期待したほど成分が生きてこないことがあります。まず土台を整えてから必要なものを届けることで、同じ美容液でも肌の反応に差が出やすくなります。
参考文献
- Polat BE, Hart D, Langer R, Blankschtein D. Ultrasound-mediated transdermal drug delivery: mechanisms, scope, and emerging trends. J Control Release. 2011;152(3):330-348.
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■ 執筆者・監修者プロフィール
中野 陽子(アートラウンジクリニック院長 / 麻酔科専門医・麻酔科指導医)
【略歴・学術実績】
・2007年: 獨協医科大学医学部 卒業。在学中、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)へ留学。
・2009年〜: 沖縄県立北部病院、岩手医科大学などで麻酔科学を深く研鑽。
・2016年: 日本麻酔科学会誌『麻酔』にて、小児の高度な気道管理に関する論文を筆頭著者として発表。
・2022年: 大手美容クリニックを経て、アートラウンジクリニック院長に就任。
・2025年〜: 現在も大学病院 麻酔科非常勤医師を兼務。
最前線の麻酔科医としての豊富な臨床・学術経験(小児麻酔などの高度な気道・安全管理含む)を活かし、美しさと安全性を高いレベルで両立する美容医療を提供しています。