
「脂肪を減らしたいです」
「顔の脂肪をなくしたいです」
というご相談をよくいただきます。
もちろん、脂肪が多いことで輪郭が大きく見える部位では、脂肪を減らす治療が適していることもあります。
しかし、顔の脂肪は単なる「余分な組織」ではありません。
実は、顔の脂肪は
- 顔を支える
- 表情を滑らかにする
- 皮膚の健康を保つ
という、大切な役割を担っています。
表情を滑らかにする脂肪
顔には皮膚のすぐ下に表層脂肪があります。
この脂肪は、皮膚とSMAS・表情筋の間でクッションとして働いており、表情運動に伴う皮膚の滑走を助ける重要な組織です。適度な厚みと柔軟性を保つことで、自然な表情の動きに寄与していると考えられています。
加齢とともに表層脂肪が菲薄化したり、線維化や位置の変化が起こると
- 表情が硬く見える
- 小ジワが目立つ
- 皮膚の動きがぎこちなく見える
といった変化につながる可能性があります。
顔を支える脂肪
一方、深層脂肪は骨の上で顔を支える土台としての役割を担っています。
加齢によって深層脂肪が萎縮すると
- 頬がこける
- こめかみが痩せる
- ほうれい線やマリオネットラインが目立つ
など、老化の印象が強くなります。
つまり、表層脂肪は「動き」を、深層脂肪は「支え」を担当しているとも言えます。
最近注目されている dWAT
さらに近年は、皮膚のすぐ下に存在するdWAT(dermal White Adipose Tissue:真皮白色脂肪組織)にも注目が集まっています。
以前は脂肪は、エネルギーを蓄えるための組織と考えられていました。しかし近年では、皮膚の脂肪組織は代謝だけでなく【皮膚の恒常性維持や創傷治癒、免疫応答を調節する「機能的な組織」】であることが明らかになってきました。
dWATは
- 創傷治癒
- 免疫応答
- 線維芽細胞との相互作用
- 真皮の恒常性維持
など、皮膚そのものの健康維持に重要な役割を果たしています。
実際にマウスを用いた研究では、傷ができると脂肪細胞は一度減少しますが、その後、新たな脂肪細胞が創部に再び現れ、線維芽細胞や免疫細胞と協調しながら組織修復を助けることが示されています。
つまり、脂肪は単なる「厚み」ではありません。皮膚を修復し、健康を維持するために働く、生物学的に活発な組織でもあるのです。
創傷治癒の過程では脂肪細胞が創部に再び現れ、線維芽細胞や免疫細胞と協調しながら組織修復に関与することが示されています。脂肪細胞は単なるエネルギー貯蔵庫ではなく、皮膚の再生を支える重要な細胞です。
(参考:Schmidt BA, Horsley V. Intradermal adipocytes mediate fibroblast recruitment during skin wound healing. Development. 2013;140(7):1517–1527.)
だから私は「脂肪を守る」治療も考えます
美容医療では、「脂肪を減らす」ことが必要な場面もあります。しかし同時に、守るべき脂肪もあります。
顔の脂肪は単なるボリュームではありません。
表情を生み
輪郭を支え
そして皮膚の健康を維持する。
そんな重要な役割を担っています。
だから私は「どれだけ脂肪を減らすか」ではなく、「どの脂肪を守り、どこを支えるか」を考えながら治療を組み立てています。
これは、注入治療においても、たるみ治療の機器においても、同じことを考えながら治療を組み立てています。

自然な若返りとは、単純に何かを取り除くことではありません。顔が本来持っている構造や機能を理解し、そのバランスを整えること。それが、長く美しく年齢を重ねるための美容医療だと私は考えています。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 顔の脂肪は減らしたほうがいいのですか?
脂肪が多いことで輪郭が大きく見える部位では、脂肪を減らす治療が適していることもあります。しかし顔の脂肪は単なる「余分な組織」ではなく、顔を支える・表情を滑らかにする・皮膚の健康を保つという大切な役割を担っています。「どれだけ脂肪を減らすか」ではなく「どの脂肪を守り、どこを支えるか」を考えることが重要です。
Q. 表層脂肪と深層脂肪の違いは何ですか?
表層脂肪は皮膚のすぐ下にあり、皮膚とSMAS・表情筋の間でクッションとして働き、表情運動に伴う皮膚の滑走を助けています。一方、深層脂肪は骨の上で顔を支える土台としての役割を担っています。表層脂肪は「動き」を、深層脂肪は「支え」を担当しているとも言えます。
Q. dWAT(真皮白色脂肪組織)とは何ですか?
dWAT(dermal White Adipose Tissue:真皮白色脂肪組織)は皮膚のすぐ下に存在する脂肪組織です。以前は脂肪はエネルギーを蓄えるための組織と考えられていましたが、近年では創傷治癒・免疫応答・線維芽細胞との相互作用・真皮の恒常性維持など、皮膚そのものの健康維持に重要な役割を果たす「機能的な組織」であることが明らかになってきました。
Q. 顔の脂肪が減るとどのような変化が起きますか?
加齢とともに表層脂肪が菲薄化したり、線維化や位置の変化が起こると、表情が硬く見える・小ジワが目立つ・皮膚の動きがぎこちなく見えるといった変化につながる可能性があります。また深層脂肪が萎縮すると、頬がこける・こめかみが痩せる・ほうれい線やマリオネットラインが目立つなど、老化の印象が強くなります。
参考文献
- Rohrich RJ, Pessa JE. The fat compartments of the face: anatomy and clinical implications for cosmetic surgery. Plast Reconstr Surg. 2007;119(7):2219-2227.
- Hutto-Vattoth A, et al. A Practical Review of the Muscles of Facial Mimicry With Special Emphasis on the Superficial Musculoaponeurotic System. AJR Am J Roentgenol. 2015.
- Coleman SR, Grover R. The anatomy of the aging face: volume loss and changes in 3-dimensional topography. Aesthet Surg J. 2006;26(Suppl 1):S4-S9.
- Schmidt BA, Horsley V. Intradermal adipocytes mediate fibroblast recruitment during skin wound healing. Development. 2013;140(7):1517-1527.
- Chen SX, Zhang LJ, Gallo RL. Dermal white adipose tissue: a newly recognized layer of skin innate defense. J Invest Dermatol. 2019;139(5):1002-1009.
- Driskell RR, Jahoda CAB, Chuong CM, Watt FM, Horsley V. Defining dermal adipose tissue. Exp Dermatol. 2014;23(9):629-631.
- Guerrero-Juarez CF, Plikus MV. Emerging nonmetabolic functions of skin fat. Nat Rev Endocrinol. 2018;14(3):163-173.
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■ 執筆者・監修者プロフィール
中野 陽子(アートラウンジクリニック院長 / 麻酔科専門医・麻酔科指導医)
【略歴・学術実績】
・2007年: 獨協医科大学医学部 卒業。在学中、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)へ留学。
・2009年〜: 沖縄県立北部病院、岩手医科大学などで麻酔科学を深く研鑽。
・2016年: 日本麻酔科学会誌『麻酔』にて、小児の高度な気道管理に関する論文を筆頭著者として発表。
・2022年: 大手美容クリニックを経て、アートラウンジクリニック院長に就任。
・2025年〜: 現在も大学病院 麻酔科非常勤医師を兼務。
最前線の麻酔科医としての豊富な臨床・学術経験(小児麻酔などの高度な気道・安全管理含む)を活かし、美しさと安全性を高いレベルで両立する美容医療を提供しています。